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シーシャの煙に香り成分はどれだけ届く? — 記事キービジュアル
香り・化学2026.10.1011分で読めます

シーシャの煙に香り成分はどれだけ届く?

水を通ると減るが、1パフあたりのバニリンは電子たばこより多かった

シーシャの煙はボトルの水をくぐってから口に届く。この「水を通る」仕組みから、シーシャは紙巻きたばこより安全で依存しにくいと思われがちだ。シーシャでボウルに詰める「フレーバー」は、香りをつけたシーシャ用のたばこ葉で、ニコチンを含む。では、香り成分(フレーバーの香りのもとになる物質)やニコチンは、実際にどれだけ煙に乗って口まで届き、水はそれをどれだけ減らすのか。

この論文は、市販のシーシャ台に弁を取り付けて、水を通る前の煙と通った後の煙を別々に集め、香り成分3種とニコチンの量を比べた。さらに、同じ研究室が以前に同じ捕集方法で測った電子たばこのエアロゾル(吸い込む霧状の蒸気)の値と並べ、シーシャの煙の香り成分とニコチンが多いのか少ないのかを比べている。

研究の概要

研究の種類
実験室での測定研究(人は参加していない)。米イェール大学のチーム
対象フレーバー
Al Fakherのバニラとチェリー、Rommanのシナモンの3種
測った成分
バニリン(バニラ)、ベンズアルデヒド(チェリー)、オイゲノール(シナモン)とニコチン
比べたもの
水を通る前と後の煙。さらに、過去に同じ捕集方法で測った電子たばこ2種のエアロゾル
吸い方と回数
1パフ2.85秒・532mL、パフ間17秒で40〜50パフ。バニラとチェリーは各3回、シナモンは1回

なぜ香り成分とニコチンを測るのか

シーシャでは、ボウルの上の熱い炭のそばを通った空気がフレーバーを熱し、できた煙が水の入ったボトルをくぐってから吸う人に届く。

著者らによると、2019年には米国の中高生のおよそ69万人が過去30日以内にシーシャを使ったと答えている。シーシャは水を通すので紙巻きたばこより安全で依存しにくいという思い込みの根拠として、水によるろ過のほか、煙の「まろやかさ」やフレーバーがあること自体を挙げる人もいる。若者がシーシャを使う主な理由の一つがフレーバーの多さだという報告もある。

シーシャの主流煙(吸い口から吸い込まれる煙)については、一酸化炭素や重金属など、たばこ葉や炭に由来する有害物質がすでに詳しく調べられている。一方で、製品の魅力や依存につながりうる香り成分とニコチンが、フレーバーから煙へどれだけ移るのかはあまり分かっていなかった。

目的は二つ。一つは、主流煙の香り成分とニコチンを測って電子たばこのエアロゾルと比べ、規制の議論の材料にすること。もう一つは、水を通る前と後で煙を採り、水によるろ過がそれらをどれだけ減らすかを確かめることである。

水を通る前と後の煙を取り分ける

実験には、オンラインで購入した34インチ型でホース1本のシーシャ台を使った。中央の管(ステム)を上から18cmのところで切り、三方向に切り替えられる弁を取り付けた。この弁の横の出口から採った煙が「水を通る前の煙」、通常どおりボトルの水をくぐってから採った煙が「水を通った後の煙」である。

フレーバーはAl Fakherのチェリーとバニラ、Rommanのシナモンの3種類である。リング形の市販炭を使い、ボトルには水を1.2L入れた。陶器のボウルに約10gのフレーバーを詰めてアルミホイルで覆った。

水を通る前の煙と通った後の煙は別々の実験で採り、バニラとチェリーは各3回、シナモンは1回繰り返した。

機械で吸わせ、成分の量を測る

フレーバーは、著者らが以前の研究で作った吸引装置で吸わせた。煙は液体窒素で冷やした二つの捕集管に通し、凍らせて集めた。吸い方は1パフ2.85秒・532mLで、パフの間は17秒空けた。これは、レバノンのベイルートでシーシャカフェの利用者を観察して作られた吸い方のモデル(ベイルート・プロトコル)を調整したものである。1回の実験で40〜50パフを吸わせた。

測ったのは、バニラの主な香り成分であるバニリン、チェリーのベンズアルデヒド、シナモンのオイゲノールの3種の香り成分とニコチンである。著者らが以前に電子たばこのエアロゾルで測った値と比べられるよう、この3種を選んだ。煙だけでなくフレーバーそのものに含まれる量も、メタノールで成分を抽出して測った。分析には、混ざった成分を一つずつ分けてそれぞれの量を測るガスクロマトグラフィーを使った。

フレーバーと煙に含まれていた量

フレーバー1gあたりの主な香り成分は、バニラのバニリンが4.9mgで、チェリーのベンズアルデヒド1.1mg、シナモンのオイゲノール1.3mgより多かった。ニコチンは1gあたり、バニラ1.4mg、チェリー0.65mg、シナモン1.8mgだった。

煙の値は、バニラとチェリーは3回の平均、シナモンは1回の測定値である。香り成分は、バニリンは209μg→55μg、ベンズアルデヒドは101μg→9.8μg、オイゲノールは25μg→6.1μg(水を通る前→通った後、1パフあたり)だった。

ニコチンも同様に、バニラ44→14μg、チェリー23→12μg、シナモン61→43μgだった。著者らは、香り成分もニコチンも煙へ十分に移り、それぞれのフレーバーらしい煙のにおいをつくっていたと述べている。

水はどれだけ減らしたか

著者らは、水を通る前の量を通った後の量で割った値を「水ろ過による減少倍率」と呼んだ。香り成分ではバニリン3.8倍、ベンズアルデヒド10倍、オイゲノール4.1倍で、水を通ると約4分の1から10分の1に減っていた。ニコチンはバニラ3.1倍、チェリー1.8倍、シナモン1.4倍で、香り成分より減り方が小さかった。

ニコチンの減り方は過去の報告(約2〜6倍)と同程度で、著者らはこれを実験装置が妥当に働いている裏付けとみている。そのうえで、水を通さずに吸えば、香り成分とニコチンをかなり多く吸い込むことになりうると指摘する。

減り方の違いは、水への溶けやすさでは説明しにくい。ニコチンは水とどんな割合でも混ざるのに、減少倍率はむしろ小さかった。著者らは、水への溶けやすさは小さな役割しか果たしておらず、フレーバーの組成、吸い方、シーシャ台の作り(煙の通り道の長さ、ステムが沈む深さ、泡の大きさなど)が影響すると考えている。ボトルの水に氷やアルコール飲料を入れる利用者もいるという報告があり、ろ過の効果はさらに見通しにくくなる。

香り成分を吸い込むことの安全性

バニリン、ベンズアルデヒド、オイゲノールは食品や化粧品に使われ、米食品医薬品局(FDA)から「一般に安全と認められる」物質とされている。ただしこの評価は食べる場合のもので、肺に吸い込む場合には当てはまらない。

バニリンとベンズアルデヒドは軽度から中等度の気道刺激物質で、オイゲノールは触れるとアレルギーの原因になりやすい物質である。3種とも喘息との関連が指摘されている。さらに香り成分は、シーシャを魅力的に感じさせ、ニコチンの不快な味を部分的に隠して吸い込みやすくする役割も持つ。

電子たばこと比べると

著者らは、シーシャの煙を、同じ研究室が以前に同じ捕集方法で測った2種類の電子たばこのエアロゾルと並べた。紙巻きたばこに似た形の第1世代電子たばこ(V2)にバニラまたはチェリーのリキッドを入れたものと、小型カートリッジ式のJuulの「クレームブリュレ」である。

1パフあたりで比べると、シーシャの煙のベンズアルデヒドはV2より少なかった。一方バニリンは、水を通った後の煙でもJuulのおよそ7倍、V2のおよそ2倍だった。ベンズアルデヒドのように電子たばこより少ない成分もあることから、著者らは、煙の香りの強さはフレーバー自体の香りの強さで変わるとしている。そのうえで、今回測った香り成分の量は電子たばこと同程度か、1桁(約10倍)多い水準だったとまとめた。1桁多いという表現がどの成分・条件の比較を指すかは明記されていないが、今回の数値で電子たばこを大きく上回ったのはバニリンである。著者らはこの結果が、若い成人がシーシャを使う主な理由の一つがフレーバーだという以前の調査結果を裏付けるとみている。

ニコチンは事情が違った。水を通った後の煙の1パフあたりのニコチンは、Juulの約10〜35%、V2の約40〜120%だった。V2を上回る場合もあったが、著者らは、1パフあたりのニコチンはシーシャの煙のほうが電子たばこより少ないとまとめている。

1回のセッション全体で考える

ただし、シーシャは1回にまとめて長く吸うのに対し、電子たばこは1日に少しずつ何回にも分けて使われることが多い。著者らは、ベイルート・プロトコルの平均171パフを1回のセッションとみなして計算した。バニラフレーバーの煙(水を通った後)を、バニラリキッドを入れたV2、Juulのクレームブリュレと比べると、シーシャ1回分と同じ量を電子たばこで吸うには、ニコチンならJuulで19パフ、V2で67パフで足りるが、バニリンではJuulで1176パフ、V2で336パフが必要になる。

電子たばこの1回の使用はたいてい2〜10パフで終わるため、著者らは、シーシャを吸う人は1回のセッションで、より多くの香り成分と、同程度かそれ以上のニコチンを受け取っている可能性が高いと結論している。

今回使ったフレーバーのパッケージには、ニコチン量の表示も、ニコチンの多少の目安とされることがある「ノンウォッシュ」「ウォッシュ」の表記もなかった。これでは利用者はニコチンの強さを知ることができない。

規制への提言

著者らは、甘いフレーバーのシーシャが若者をニコチンへ導く問題は、フレーバー付き電子たばこほど注目されていないと指摘する。米国の高校生では、過去30日以内にシーシャを使ったと答える割合が、2011年以降3〜5%で推移している。

そのうえで、電子たばこのフレーバー規制を議論するなら、シーシャのフレーバーなどほかのフレーバー付きたばこ製品も対象に含めるべきだと提言する。若者に向けて、有害物質、香り成分、ニコチンの量をほかの製品と比べて示すこと、シーシャのパッケージにニコチン量の表示がない問題に取り組むことも挙げている。

この研究から言えることと限界

この研究が示したのは、ボトルの水は香り成分とニコチンを減らすが、取り除き切れないということである。水を通った後でも、バニリンは1パフあたり電子たばこより多く、1回のセッション全体ではさらに差が開くと見積もられた。

一方で、測ったのは1台のシーシャ台と3種のフレーバーだけで、シナモンは1回だけの測定だった。セッション全体の量は171パフという平均値を当てはめた計算で、電子たばことの比較も別の測定との比較である。著者らも、より幅広いフレーバーとシーシャ台で調べること、ろ過に影響する条件を調べること、香り成分を吸い込んだときの毒性を理解することが必要だとしている。

この記事の要点

  1. 水を通ると香り成分は約4〜10分の1に、ニコチンは約3〜7割減ったが、どちらもなくならなかった。
  2. 水を通った後でも、バニリンは1パフあたりJuulのおよそ7倍、V2のおよそ2倍だった。ニコチンは1パフあたりJuulの約10〜35%、V2の約40〜120%で、著者らは電子たばこより少ないとしている。
  3. 1回のセッション全体では、電子たばこより多くの香り成分を受け取る可能性が高いと著者らはみている。

読むうえでの注意

  • 1台のシーシャ台と3種のフレーバーによる少数回の測定で、シナモンは1回だけだった。
  • 電子たばことの比較は、同じ研究室が同じ捕集方法で行った別の測定との比較である。
  • セッション全体の量は、171パフという平均値を当てはめた見積もりである。

公開 2026.10.10
記事は論文の要約であり医学的な助言ではありません