シーシャと健康、62項目のうち31項目で関連
――191件の研究をまとめても、因果はまだ決まらない

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シーシャを吸う人と吸わない人では、病気や症状、死亡などに違いがあるのか。この論文は、各地の研究を健康項目ごとにまとめて比べました。その結果、調べた項目の半数で、偶然のばらつきだけでは説明しにくい関連が示されました。胃がん、肺がん、膀胱がん、食道がんも、その中に含まれます。
191件の観察研究を一つにまとめる
この論文に集められたのは、シーシャを吸う人と吸わない人で、病気、症状、死亡などの健康状態にどのような違いがあるかを調べた観察研究です。観察研究とは、研究者が喫煙を割り当てず、現実にある喫煙状況と健康状態を比べる研究のことです。それぞれの研究が報告した結果を、健康アウトカムごとにまとめています。健康アウトカムとは、病気、症状、死亡など、健康について評価する項目を言います。
方法は、系統的レビューとメタ分析です。系統的レビューとは、決めた手順に沿って研究を探し、選び、評価する方法です。まず、どのような研究を対象にするかを決め、その条件に合う報告を集めます。次に、同じ健康項目を扱った研究を選び、調べ方や結果をそろえて読みます。メタ分析とは、選ばれた複数の研究結果を統計的にまとめ、全体としてどのような関係が見えるかを調べる方法です。研究ごとに人数や条件が違っていても、同じ健康項目について報告された結果を、比べられる形に置き直します。一つの研究だけを見るのではなく、すでにある研究群を同じ枠組みで読み直す。新しく人を集めて実験するのではなく、散らばった報告を探し、条件に合うものを選び、その結果を健康項目ごとにまとめる研究です。
対象は24か国の191件、計807,174人分。国も人数も異なる研究を一つに集めることで、個別の報告だけではつかみにくい全体像を数字にしています。
62項目の半分で、統計学的な関連
研究チームは、健康について評価した項目ごとに、複数の研究結果を統合しました。同じ病気や症状を扱っていても、研究ごとに国、人数、対象者の条件は異なります。使ったのは、ランダム効果モデルと呼ばれる統計方法です。これは、集めた研究の条件が完全には同じでなく、結果にも研究ごとの幅があることを見込んで、全体の値を求める方法です。条件の違いを消して、すべてを一つの大きな研究として扱うわけではありません。異なる研究を同じ健康項目のもとに置き、それぞれの違いを残したまま全体の結果を求めています。
結果は、病気・症状・死亡など62項目のうち31項目で、統合した効果量が統計学的に有意でした。効果量とは、シーシャを吸う人と吸わない人のあいだに見られた差や関連の大きさを、統計上の値で表したものです。統計学的に有意とは、研究が置いた基準では、偶然のばらつきだけでは説明しにくいという判定です。ここで数えているのは人ではなく、健康について調べた項目です。シーシャを吸う人の半数が病気になった、という意味ではありません。
新しい研究まで見込むと、三つに絞られる
論文は、統合した効果量だけでなく、予測区間も示しました。予測区間とは、同じ種類の研究を新たに行ったとき、その結果が入りうる範囲のことです。メタ分析で求めた効果量は、今回集めた研究をまとめた中心の結果を示します。予測区間は、その中心だけを見るのではなく、研究ごとの違いを含めて、次の研究結果がどこまで振れうるかを示します。平均の結果が統計上の基準を満たしていても、新しい研究の結果まで同じ方向になるとは限りません。いまある研究をまとめた値と、これから行われる研究で起こりうる幅は、同じ数字ではありません。予測区間は、その二つを分けて読むためのものです。
予測区間まで有意だったのは、脳卒中、冠動脈疾患、がん死亡の三つでした。冠動脈疾患とは、心臓へ血液を送る冠動脈に関わる病気のことです。統合した平均に加えて、研究ごとの違いを見込んだ範囲でも統計上の基準を満たしたのは、この三つです。
31項目という結果は、統合した効果量についての判定です。脳卒中、冠動脈疾患、がん死亡の三つは、予測区間についての判定です。どちらも「有意」という言葉を使いますが、前者は集めた研究の中心の結果、後者は研究ごとの違いを含め、新しい研究で起こりうる幅まで見た結果です。
四つのがんに示された関連
統計学的に有意だった31項目には、胃がん、肺がん、膀胱がん、食道がんの四つが含まれます。
ここで「関連」とは、シーシャを吸う人と吸わない人を比べた研究結果に、健康状態の違いが統計上現れたということです。胃がん、肺がん、膀胱がん、食道がんは、それぞれ別の健康項目として判定されています。「統計学的に有意」という同じ基準で整理されていますが、四つのがんの重さを比べた結果でも、がん同士の差を順位づけた結果でもありません。各項目について、シーシャ喫煙との関連が偶然のばらつきだけでは説明しにくいかを判定したものです。
「強い関連」と「説得力のあるエビデンス」
著者らの総括は強い言葉です。要旨では、シーシャ喫煙と有害な健康アウトカムとの「強い関連」と述べています。結論では、幅広い有害な健康アウトカムと統計学的に有意に関連することについて、「説得力のあるエビデンス」を示したとしています。その同じ結論で、エビデンスの質は大部分が「低い」から「非常に低い」と認め、さらに質の高い研究が必要だとしています。エビデンスの質とは、得られた関連をどこまで確かなものとして扱えるかの評価です。「低い」「非常に低い」は、関連がなかったという意味ではなく、研究上の根拠に留保があることを表します。
広い関連から次の研究へ
組み入れられた研究は、いずれも観察研究です。研究者が喫煙を割り当てて原因と結果を直接確かめたものではありません。そのため、統計学的な関連だけで、個々の病気の原因を確定することはできません。因果的な関連をよりよく理解するため、著者らは質が高く、適切に実施されたコホート研究を求めています。
コホート研究とは、特定の集団を時間を追って調べ、喫煙状況とその後の健康状態との関係を見る研究です。ある時点の喫煙と病気を並べるだけではなく、先にどのような喫煙状況があり、その後にどのような健康状態が確認されたかを追います。研究者が人に喫煙を割り当てるわけではないため、コホート研究も観察研究の一つです。それでも、時間の順序を含めて関係を検討できます。著者らが求めているのは、こうした研究を適切な手順で行い、質の高い根拠を積み重ねることです。
著者らがコホート研究を不可欠だとした目的は二つあります。一つは、シーシャ喫煙と健康状態の因果的な関連を、よりよく理解すること。もう一つは、シーシャ喫煙の害を減らす有効な公衆衛生政策へ、研究から得た情報を渡すことです。公衆衛生政策とは、個人の治療ではなく、集団の健康被害を減らすための対策を指します。
S2はこう読む
- 病気・症状・死亡など、調べた62項目のうち31項目で、シーシャ喫煙との統計学的に有意な関連が示されました。
- 胃がん、肺がん、膀胱がん、食道がんは、統計学的に有意だった31項目に含まれます。これとは別に、予測区間まで有意だったのは、脳卒中、冠動脈疾患、がん死亡の三つでした。
- 著者らは「強い関連」「説得力のあるエビデンス」と総括する一方、エビデンスの質は大部分が「低い」から「非常に低い」と認め、質の高いコホート研究を求めています。
正直な注意書き
- 組み入れられた191件は観察研究です。統計学的な関連から、個々の病気との因果関係までを確定した研究ではありません。
- 統計学的に有意だったのは62項目中31項目です。予測区間まで有意だったのは、脳卒中、冠動脈疾患、がん死亡でした。
- エビデンスの質は大部分が「低い」から「非常に低い」と評価されています。著者らは、さらに質の高い研究が必要だとしています。