シーシャの煙は何でできている?
グリセリン由来の気体と糖由来の微粒子をリアルタイム測定

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シーシャの煙は、炭の燃焼物と、加熱されたフレーバーから放出される物質が混ざり、水を通って口元へ届く。水をくぐるため紙巻きたばこより有害物質が少ないと思われることもあるが、水が何をどこまで除くかは成分ごとに異なる。さらに、従来の分析は一回のセッション全体をまとめて採取する方法が中心で、煙の中身が時間とともにどう変わるかは見えにくかった。
この研究は、吸い口へ向かう主流煙をその場で連続測定し、一酸化炭素、気体の有機成分、直径4〜100nmの微粒子を調べた。問いは、煙の主要成分は何か、炭・フレーバー・水がそれぞれどう関わるか、紙巻きたばこの煙とどう違うかである。
研究概要
- 試料
- 3種類のフレーバーと3R4F標準紙巻きたばこ
- 条件
- 10gを炭3個で加熱し、30分間に毎分2回吸引
- 測定
- 一酸化炭素、揮発性有機化合物、粒径、粒子の化学組成
- 対照
- 炭なし、水なし、フレーバーなし、純グリセリンなど
3種類のフレーバーを同じ条件で加熱
実験にはガラス製の同じシーシャ台を用いた。シーシャフレーバーの通常品としてAl Fakherのアップル、たばこ葉不使用フレーバーとしてHydro Herbalのバナナ、ダークリーフとしてStarbuzzのノンウォッシュダークリーフ・ブラックベリーをそれぞれ10g詰め、天然ココナッツ炭3個で加熱した。1回860mLを4秒かけて吸い、毎分2回、計30分という条件である。これは実際の利用者を基にした吸引条件の範囲内だが、特定の台、炭、詰め方による実験である。
煙は測定器が扱える濃度まで平均276倍に薄め、粒径を測る装置、一酸化炭素計、気体と粒子を別々に測る2種類の質量分析計へ送った。質量分析は、物質を質量と電荷の比で見分ける方法である。炭だけ、水を入れない、炭を使わない、フレーバーの代わりに純グリセリンを置く、といった対照実験も行った。紙巻きたばことの比較には3R4Fという研究用標準品を使った。
30分間、ボウル内の温度は265〜318℃で、吸引するたびに約50℃下がり、その後また上がった。10gのフレーバーは平均2.2±0.4g減った。研究者は、この連続測定によって、セッション全体の合計量だけでなく、成分や粒子数の時間変化も追跡した。
一酸化炭素の主な発生源は炭
一酸化炭素計の故障により、この測定は通常のフレーバーを使った一部の実験と標準紙巻きたばこに限られた。それでも発生源を分ける対照実験では、フレーバー、水、炭をそろえた場合、水を抜いた場合、炭だけの場合の間に有意な差はなかった。逆に炭を使わず加熱もしない場合、一酸化炭素は検出されなかった。したがって、この条件では一酸化炭素の主な発生源は炭の燃焼だと判断された。
主流煙1吸引あたりの推定量はシーシャで2.0±0.6mg、紙巻きたばこで1.4±0.1mgだった。30分60吸引へ積算するとシーシャは121mgとなり、この実験の紙巻きたばこ1本分9.7mgの約12倍に相当した。ただし、これは同じ測定系で得た一酸化炭素量の比較であり、シーシャ1吸引と紙巻きたばこ1本の健康影響が同じという意味ではない。
気体ではグリセリン由来の信号が中心
3種類のフレーバーの気体成分にはよく似た主要信号が現れた。グリセリンそのものに加え、加熱分解で生じ得るアセトアルデヒド、アクロレイン、グリコールアルデヒドなどに対応する信号である。純グリセリンの対照実験にも共通の信号が見られたことから、湿潤剤として配合されるグリセリンとその分解物が気体の測定結果を圧倒していると研究者は解釈した。フレーバー間には強度の違いがあり、ニコチンなしと表記されたたばこ葉不使用フレーバーは、主要な多くの信号がむしろ強かった。
紙巻きたばこの煙は別の分布を示し、アセトニトリル、メタノール、イソプレン、ベンゼンの信号が目立った。シーシャでもベンゼンは少量検出され、通常品とたばこ葉不使用フレーバーでは大部分が加熱されたフレーバー側に由来するとみられた。ニコチンは通常品とダークリーフでは少量検出されたが、たばこ葉不使用フレーバーでは検出されなかった。
水ありと水なしを比べると、メタノールとエタノールには強い減少が見られた一方、測定した多くの有機成分では分布や信号強度に有意な差がなかった。ニコチンの小さな信号にも明瞭な減少はなかった。研究者は、今回の台、水量、浸水深さ、吸引条件では、水は揮発性有機化合物の十分なフィルターとして働かなかったと結論づけた。
微粒子は序盤に多く、水なしでは減った
直径4〜100nmの粒子が分布を支配したのは、セッション最初の10分だった。この間の分布の山は約80nmで、その後は約200nmへ移った。研究者は、加熱されたフレーバーの蒸気から新しい粒子が生まれ、時間とともに凝縮や衝突で成長した可能性を挙げた。炭だけでも各サイズの粒子が継続して発生した。
水を抜いた実験では、とくに序盤の20nm未満の粒子が少なく、微粒子全体も通常条件より少なかった。水蒸気と冷却が新しい粒子の形成を助けた可能性がある。つまり、水はこの粒径では保護フィルターになるどころか、今回の条件では粒子形成を支えたように見えた。もっとも、台の形や水量、吸引方法が変われば結果も変わり得る。
100nm未満の粒子数を1吸引あたりで平均すると、シーシャは紙巻きたばこ2.4本分に相当した。開始直後は、100nm未満で5本分、20nm未満で25本分という計算になった。10分後には1吸引の粒子数は紙巻きたばこ1本とおおむね同程度まで下がった。この換算は粒子の個数と吸引量に基づくもので、毒性や病気の危険度を本数へ換算した値ではない。
粒子の主成分は糖に由来する物質
粒子の化学組成を調べると、初期に集めた質量の中心は直径40〜80nmだった。正イオンの主要成分は糖や多糖の誘導体で、代表的な信号はレボグルコサンと考えられた。これはセルロースの燃焼でも生じるが、フレーバーに加えられた甘味料にも由来し得る。グリセリンと単糖が縮合したとみられる物質も主要成分だった。
通常品とダークリーフの粒子からはニコチンも見つかり、ダークリーフの割合が高かった。一方、紙巻きたばこの粒子ではニコチンが主要な信号で、成分全体もシーシャより複雑だった。研究者は、シーシャでは比較的低い温度で加熱され、フレーバー中の糖やグリセリンなど添加成分が粒子を強く特徴づけたのに対し、紙巻きたばこでは高温燃焼が多様な物質を生んだと考察した。
成分の特徴は見えたが、健康影響そのものは測っていない
この研究が示した主筋は、シーシャ主流煙の気体がグリセリンとその分解物に、微粒子が糖由来物質に強く特徴づけられ、一酸化炭素は主に炭から出たという点である。水は多くの気体成分を十分に除かず、100nm未満の粒子は最初の10分に多かった。煙の組成は紙巻きたばこと異なるが、一酸化炭素、アクロレイン、アセトアルデヒド、ベンゼンなどへの曝露がなくなるわけではない。
ただし、研究が測った有機成分の多くは相対的な信号の強さであり、個々の有害物質の吸入量は定量していない。実験は一種類のシーシャ台と定めた吸引条件によるもので、実際の使い方全般を代表するとは限らない。紙巻きたばことの「何本分」も粒子数や一酸化炭素量という個別指標の比較であり、用量反応や健康被害の同等性を示さない。著者らも、生物モデルによる健康影響の検討を今後の課題としている。
原典の要点
- 気体の測定信号はグリセリンとその加熱分解物が中心で、微粒子は糖由来物質が中心だった。
- 一酸化炭素は主に炭から生じ、水は多くの揮発性有機化合物を十分に除かなかった。
- 100nm未満の粒子は開始後10分に多く、本数換算は健康影響の換算ではない。
読むうえでの注意
- 一種類の台と特定の吸引条件による実験であり、個々の有害物質の用量や人の病気の発生率は測っていない。
- 紙巻きたばことの比較は一酸化炭素量または粒子数という個別指標で、総合的な安全性の順位ではない。