No.18香り・化学

たばこ葉不使用フレーバーの煙は安全か

たばこ葉入りと比べてタールや一酸化炭素は同等以上、カフェの空気も調査

2026.11.0811分で読めます

パッケージに「ニコチン0%、タール0%」や「たばこ0%」と書かれたたばこ葉不使用フレーバーは、販売サイトで「健康的」とうたわれることがある。だが、中身や熱を加えたときの煙の成分について、実質的な情報はほとんどない。

カナダ・アルバータ大学を中心とする研究チームは、カナダで売られている3メーカーを取り上げ、熱を加える前の葉と喫煙機で吸わせた煙を調べた。あわせて、たばこ葉不使用フレーバーが吸われているシーシャカフェの空気も測った。煙に含まれる有害物質の多くは、比較したたばこ葉使用フレーバーと同等かそれ以上だった。

このページの目次

研究の概要

研究の種類
製品の化学分析、喫煙機による煙の分析、店内の空気の実地測定を組み合わせた研究
対象製品
カナダ・エドモントンで買ったたばこ葉不使用フレーバー3メーカー(Zero n Zero、Soex、Hydro)のストロベリー。比較はたばこ葉使用フレーバー1製品(Nakhla)
煙の測り方
ボウルに10g、1回0.53L・2.6秒のパフを17秒おきに171回。各製品5〜6回の繰り返し
空気の測定
たばこ葉不使用フレーバーが吸われるシーシャカフェ6店で各1時間。比較は喫煙可のカジノ2回
主な結果
煙の有害物質の多くがたばこ葉使用フレーバーと同等以上。カフェのPM2.5と一酸化炭素はカジノより有意に高かった

なぜたばこ葉不使用フレーバーを調べたのか

論文によれば、北米ではシーシャの利用が若い成人の間で増え、たばこ葉使用フレーバーのほかに「たばこ0%」「ハーブ」などと表示された製品が広く出回っている。煙が水を通ることで有害物質が取り除かれると考え、シーシャは紙巻きたばこより害が少ないと信じる人も多い。しかし先行研究は、シーシャの利用者が紙巻きたばこ喫煙者と同程度の発がん物質に全身でさらされていることや、たばこ葉使用・不使用のどちらの煙でも吸った直後に心臓の自律神経の働きが損なわれることを示している。

規制の面では、WHOが公共の場でのシーシャ利用を紙巻きたばこと同様に禁止するよう勧めている。北米には、たばこ葉不使用とされる製品を出すことで禁煙規制の適用除外を勝ち取った飲食店もある。ところが、たばこ葉不使用フレーバーの副流煙を報告した研究はなく、主流煙の有害物質の報告も1件だけだった。主流煙は吸う人が吸い込む煙、副流煙は吸い込まれずに周囲の空気へ出ていく煙を指す。

そこで研究チームは、葉の成分、決まった条件で吸ったときの煙、そして、たばこ葉不使用フレーバーが吸われているシーシャカフェで、吸っていない客も店にいるだけで有害物質にさらされるのかを調べた。最後の点は、PM2.5と一酸化炭素という単純な指標で確かめている。PM2.5は直径2.5μm以下の微小な粒子で、一般に、肺の奥まで入り込みやすい粒子の量の目安として使われる。

3つの調査の進め方

製品はエドモントンの小売店4店で買った。「タール0.0%、ニコチン0.0%」または「たばこ100%不使用」と表示されたストロベリーフレーバーで、カナダで広く手に入る3メーカーを無作為に選び、Zero n Zeroを製品A、Soexを製品B、Hydroを製品Cとした。熱を加える前の葉は、どの製品か分からないよう符号を付けて民間の分析機関へ送り、ニコチン、重金属、多環芳香族炭化水素(PAH)を測った。PAHは、一般に、有機物が不完全に燃えるときにできる物質の仲間で、論文によれば国際がん研究機関(IARC)は重金属とPAHを、発がん性がある、またはその可能性がある物質に分類している。

煙はレバノンのベイルート・アメリカン大学の研究室で分析した。比較用にたばこ葉使用フレーバーのNakhla「Two Apples」も同じ方法で吸わせた。喫煙機で1回0.53L・2.6秒のパフを17秒おきに171回繰り返し、ボウルには10gを詰めて穴を開けたアルミホイルで覆い、Al Fakherの着火剤入りの炭=クイックライトチャコールを載せた。標準的な手順で主流煙と副流煙をそれぞれ発生させて集め、各製品5回ずつ(表では製品Aのみ6回)、1セッションあたりの量を測った。

空気は、たばこ葉不使用フレーバーが吸われているシーシャカフェで測った。論文によれば、シーシャカフェは店内でたばこ製品が吸われないことを条件に禁煙法の適用除外を受けている。無作為に選んだ6店を週末の夜に身元を明かさず訪れ、測定器を隠したバッグを、どのシーシャの煙も直接かからない席に置き、店内で1時間、PM2.5と一酸化炭素を10秒ごとに記録し、空気中のニコチンもバッジで集めた。比較のため、紙巻きたばこが吸えるカジノでも2回測った。

熱を加える前の葉:中身はメーカーで大きく違った

葉に含まれる有害物質の量は、メーカーで大きくばらついた。鉛とヒ素は製品Aと製品Bでは定量できる下限を下回ったが、製品Cではそれぞれ438ng/g、281ng/gだった。クロムは160〜2190ng/g、ニッケルは150〜626ng/gで、どちらも製品Cが最も多かった。

PAHも同じ傾向で、IARCがヒトに発がん性があるとするベンゾ[a]ピレンは、製品Aで定量下限未満、製品Bで0.53ng/g、製品Cで6.33ng/gだった。多くのPAHで製品Cの値が最も高かった。一方、ニコチンは3製品のどれからも検出されなかった。

主流煙:多くの項目でたばこ葉使用と同等以上

喫煙機で吸わせた主流煙には、3製品ともかなりの量の有害物質が含まれ、ほとんどの項目でたばこ葉使用フレーバーと同等かそれを上回った。以下はどれも10gを1セッション吸わせたときの平均値で、比較の基準はたばこ葉使用フレーバーである。

タールは、たばこ葉使用フレーバーの909mgに対し、製品Aが1080mg、製品Bが1260mg、製品Cが2350mgだった。有意に多かったのは製品B(p=0.03)と製品C(p<0.001)で、製品A(p=0.2)は有意差なしだった。p値は、一般に、本当は差がないと仮定したときに偶然これ以上の差が出る確率の目安で、0.05未満を「有意」とすることが多い。3製品とも外装には「タール0%」とあった。

一酸化炭素は、197mgに対し製品Aが286mg、製品Bが237mg、製品Cが269mgで、製品AとCで有意に多かった。ホルムアルデヒドは36.0μgに対し製品Bが66.0μg、製品Cが111μgで有意に多く、アクロレインはたばこ葉使用フレーバーでは検出されなかったが製品Cで203μg出た。ベンゾ[a]ピレンは96ngに対し製品Cだけが140ngと有意に多かった。

ただし一様ではない。製品Bは、アセトアルデヒドやいくつかのPAHで、たばこ葉使用フレーバーより有意に少なかった。

副流煙:周囲へ出る煙にも同じ傾向

周囲へ出る副流煙でも似た結果になった。一酸化炭素は、たばこ葉使用フレーバーの1880mgに対し2560〜2912mg、ベンゾ[a]ピレンは66ngに対し90〜121ngで、どちらも3製品とも有意に多かった。超微粒子は、一般にPM2.5よりさらに小さい粒子を指す。1セッションあたりの超微粒子の個数は、たばこ葉使用フレーバーの4.8×10¹²個に対し3.73×10¹²〜5.32×10¹²個で、製品Bだけが有意に少なかった。

例外もある。副流煙のホルムアルデヒドは、3製品とも2220〜2724μgで、たばこ葉使用フレーバーの4285μgより有意に少なかった。

シーシャカフェ6店の空気

6店では、測定中に平均4.2〜24台のシーシャが使われていた。測定した喫煙エリアに、調理の火のようなほかのPM2.5の発生源は見当たらなかった。

店ごとの1時間平均のPM2.5は14〜430μg/m³と大きく違い、6店全体の平均は264μg/m³だった。カジノの平均215μg/m³より有意に高かった(p<0.001)。一酸化炭素の差はさらに大きく、シーシャカフェ全体の平均6.7ppmに対し、カジノは0.4ppmだった(p<0.001)。ただしシーシャカフェは、カジノより客に占める喫煙者の割合が高く、床面積あたりの換気も少なかった。

空気中のニコチンは、6店のうち5店で検出下限未満だった。残る1店では、受動的に紙巻きたばこ0.75本分を吸い込むのに相当するニコチンが検出された。紙巻きたばこを吸う人は見られなかったため、著者たちは店内でたばこ葉に熱が加えられていたことを示すとみている。

考察:紙巻きたばことの比較と健康への意味

著者たちは、カナダの紙巻きたばこを調べた先行研究と比べ、製品Cの葉はクロムが4倍超、ニッケルが2倍で、鉛とヒ素もより多かったと指摘する。残る2製品はそれほど有害ではなかったが、カナダでたばこ製品に課される成分開示の義務(重金属を含む26成分と41種の煙成分)がたばこ葉不使用フレーバーにはなく、中身が規格化されていないことが問題だという。

煙については、「タール0%」の表示に反して紙巻きたばこ1本をはるかに超えるタールが出たこと、IARCがヒトへの発がん物質とするホルムアルデヒドなどのアルデヒド類が多く出たことを挙げる。特に重く見たのは一酸化炭素で、3製品とも副流煙の量が主流煙の6倍を超えており、吸っていない周りの人もかなりの一酸化炭素にさらされうるとした。

比較の仕方にも注意を促している。シーシャのセッションは45分〜1時間、紙巻きたばこは5分ほどで吸い終わることもあるため、1本・1回あたりで比べると誤解を招きうる。著者たちは、1人1時間あたりで比べた先行研究で、シーシャの利用者は1時間に2本吸う紙巻きたばこ喫煙者の約10倍の一酸化炭素を周囲に出すと示されたことを紹介している。

空気については、隣の厨房などほかの発生源を否定しきれないと認めたうえで、カナダの大気質健康指数(AQHI)を目安に挙げる。AQHIは1〜10の目盛りで、数値が大きいほど健康リスクが高く、7〜10は「高い」段階にあたる。1時間平均のPM2.5が200μg/m³ならAQHIは10前後に相当し、今回の6店のうち3店がこれを上回っていた。また、1店の空気からニコチンが見つかったことは、たばこ製品を吸わせないことを条件にした禁煙法の適用除外に違反が起きている可能性を示すとし、適用除外を見直すべきだと論じている。

「たばこ葉不使用」は安全の印ではない

論文はこう結論づけている。カナダで売られているたばこ葉不使用フレーバーには、発がん性があると分類される物質や、健康に有害と知られる物質が高いレベルで含まれる。その主流煙と副流煙には、多くの発がん物質と、健康に害を及ぼすおそれのある濃度の一酸化炭素やタールが含まれる。その結果、シーシャカフェの空気の質は最適とはいえない。著者たちは、たばこ葉不使用フレーバーが安全で健康的な選択肢だという通念はこの結果からは支持されず、むしろ主な有害物質の多くを、たばこ葉使用フレーバーと同等かそれ以上に出すと結んでいる。

この記事の要点

  1. たばこ葉不使用フレーバー3製品の葉からニコチンは検出されず、重金属やPAHはメーカーで大きく違い、1製品は鉛、ヒ素、クロムなどが多かった。
  2. 喫煙機の煙では、タールや一酸化炭素など多くの有害物質がたばこ葉使用フレーバーと同等以上だった。「タール0%」の3製品のタールは、たばこ葉使用フレーバーの909mgに対し1080〜2350mgで、2製品で有意に多かった。
  3. シーシャカフェ6店のPM2.5と一酸化炭素の平均は、紙巻きたばこが吸えるカジノより有意に高かった。

読むうえでの注意

  • 対象はカナダで買った3メーカーのストロベリーフレーバーで、比較のたばこ葉使用フレーバーも1製品だけだ。煙の値は、喫煙機に決まった吸い方で吸わせたときの1セッションあたりの量である。
  • カフェの空気は6店で1時間ずつ測ったもので、著者たちも厨房など他の発生源を否定しきれないとしている。カジノとは喫煙者の割合や換気も違った。
  • 葉の金属とPAHの単位は論文の本文でng/mg、論文の表1でng/gと食い違うため、記事は表1に合わせた。PM2.5の単位は論文の本文と論文の表5でmg/m³、論文の図1でμg/m³と食い違うため、記事は図1に合わせてμg/m³で記した。

公開 2026.11.08
記事は論文の要約であり医学的な助言ではありません