S2 SHISHA
Society & Psychology2026.07.314分で読めます

「シーシャは紙巻きたばこより害がありますか?」

最も多かった回答は「分からない」

「シーシャは紙巻きたばこより害がありますか?」 — 記事キービジュアル

43.9%。ある問いへの回答で、いちばん多かった割合です。問いは、こうでした。シーシャは、紙巻きたばこより害が少ないか、同じか、大きいか。米国の成人11,768人に聞いた調査で、最多の答えは「わからない」でした。次に多かった「同等か、より大きい」が43.1%。「少ない」と答えた人は、13.0%にとどまります。知らないまま吸っている人のほうが、多いようです。

1万1768人に、同じ質問をした

調査は2014年と2015年の2回、オンラインの調査パネルから確率サンプリングされた米国成人が対象です。回答率は7割超。特定の思想を持つ層に偏った、いわゆる「意見の強い人だけが答えるアンケート」ではありません。ふつうの成人に無作為に聞いた結果、という前提で数字を見る必要があります。

聞かれたのは一問。シーシャは紙巻きより害が少ないか、同じか大きいか、わからないか。四択の結果が、さきほどの数字です。少ない13.0%、同等か大きい43.1%、わからない43.9%。「わからない」を選んだ人が、実は最大勢力でした。害を知って避けているわけでも、安全だと信じて選んでいるわけでもない。宙ぶらりんのまま、手を伸ばす人が最も多かった、ということです。

軽く見る人には、共通点があった

研究チームは、この「少ない」派の内訳も調べています。年齢・学歴・喫煙状況・シーシャを吸った経験の有無で回答が変わるかを、統計的に調整した上で比較しました。

結果は、狙い撃ちしたように一貫していました。18〜24歳は65歳以上の2.7倍、大卒は高校中退以下の学歴の人の2.3倍、非喫煙者は喫煙者の2.1倍、シーシャを吸った経験のある人はない人の2.8倍、それぞれ「害は少ない」と答えやすい。若く、勉強していて、自分では紙巻きを吸わない人ほど、シーシャには甘い。知識があるはずの層ほど、なぜか無防備。

心理学には「楽観バイアス」という言葉があります。悪い出来事は自分にだけは起きない、と考えてしまう傾向のこと。シーシャは紙巻きと見た目も作法も違うぶん、この錯覚が働きやすいのかもしれません。論文自身はそこまで踏み込んでいませんが、数字の並びを見る限り、対岸の火事だと思っている人が多いのだろうと想像はできます。

そして、軽く見る人ほど、実際に吸っていた

ここからが、この論文のいちばん効くところです。「害は少ない」と答えた人は、そう思っていない人に比べて、実際にシーシャを吸っている確率が5.18倍でした。認識と行動、きれいに重なっていました。地続き。

むろん、これは相関であって因果ではありません。横断調査(ある一時点を切り取った調査)なので、「軽く見ているから吸う」のか「吸っているから軽く見るようになる」のか、向きまでは分かりません。論文自身も、そこは踏み込んでいません。それでも、誤解と行動が地続きだという事実は、動きません。

だから、隠さず書く

ここからは受け止めです。

この連載で論文を紹介しているのは、シーシャを「危ない」とも「安全」とも言うためではありません。分かっていることと、分かっていないことを、そのまま渡すためです。害を軽く見せる理由も、必要以上に煽る理由も、私たちにはありません。カウンター越しに交わす会話も、本質は同じだと思っています。聞かれたことに、知っている範囲で正直に答える。それだけです。

「わからない」と答えた4割の人たちを、この記事は少し支持したい気持ちがあります。知ったかぶりで「少ない」と答えるより、よほど正直な態度だからです。ただし、正直さはそこで止まってしまってはもったいない。知らないと認めるところからしか、ものを知ることは始まりません。

S2 reads it this way

S2はこう読む

  • 米国成人11,768人への調査で、シーシャを紙巻きより「害が少ない」と答えた人は13.0%。いちばん多かった回答は「わからない」(43.9%)でした。
  • 「害は少ない」と答えやすいのは、18〜24歳(65歳以上の2.7倍)・大卒(2.3倍)・非喫煙者(2.1倍)・シーシャ経験者(2.8倍)。
  • 害を軽く見ている人は、実際にシーシャを吸っている確率も5.18倍高い結果でした。ただし横断調査のため、誤解が先か行動が先かの因果関係は分かりません。
Honest notes

正直な注意書き

  • 米国のオンライン調査パネルによる横断調査です。日本の状況や意識にそのまま当てはまるとは限りません。
  • 横断研究(ある一時点の調査)のため、「軽く見ているから吸う」のか「吸っているから軽く見るようになる」のか、因果の向きは分かりません。
  • オッズ比は年齢・学歴などを調整した統計的な関連で、個人の判断や行動を保証・予測するものではありません。
  • 「シーシャを吸っているか」も含め、すべて自己申告(自分でそう答えた)の回答で、裏付けとなる検証は行われていません。「直近30日以内の使用」という定義も、他の研究と揃っているとは限りません。
  • この記事は調査結果を紹介する読み物です。シーシャが安全という意味では全くありません。シーシャは「たばこ」であり健康リスクがあります。医療的な助言ではありません。
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