シーシャフレーバーに潜む清涼成分
名前にミント表記がなくても検出された

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ミントやアイスと書かれたシーシャフレーバーには、冷たく感じさせる成分が入っていると想像しやすい。では、その表示がない製品はどうだろう。研究チームは、メーカーの登録情報と実際の製品の化学分析を組み合わせ、メンソールと構造や働きが似た成分の広がりを確かめた。
なぜ清涼成分を調べるのか
メンソールは香りを加えるだけの成分ではない。冷たさを感じる受容体TRPM8に作用し、煙の刺激やきつさを弱めて吸い込みやすくする。また、ニコチンの取り込みを促し、依存を強めることも知られている。味としてはっきり分かる濃度より低くても、冷却作用が生じうるため、製品名だけで使用の有無を判断できるとは限らない。
研究が対象にした「メンソール類似成分」には、メンソールのほか、メントン、カルボン、プレゴン、イソプレゴール、ピペリトン、酢酸メンチルなどが含まれる。似た構造を持ち、ミントのような香りや冷却作用をもたらす可能性がある物質だ。EUのたばこ製品指令は、たばこ製品や電子たばこで、吸入やニコチン取り込みを促す添加物を禁じている。研究チームは、規制を実際に運用するにはシーシャ製品に何が入っているかを把握する必要があると考えた。
シーシャで加熱されるものは、たばこ葉使用フレーバーだけではない。たばこ葉不使用フレーバーや、香料入りのグリセリン液を多孔質の鉱物に染み込ませたスチームストーンもある。後二者は一般にニコチンを含まないが、ニコチン添加をうたうスチームストーンもある。本研究はこれらの関連製品も分析対象に加えた。
登録された282製品と、市販18製品を調査
まず研究チームは、2020年6月にオランダのEU共通登録窓口EU-CEGへ届け出られていた、たばこ葉使用のシーシャフレーバー282製品を調べた。製品名や説明から主な香りと副次的な香りを分類し、登録成分421種類のうち、名称、冷却特性、香りの資料をもとにメンソール類似成分22種類を選び出した。登録濃度はメーカーが入力した値であり、実測値ではない。
次に、市販品18点を気体クロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)で測定した。内訳は、たばこ葉使用フレーバー5点、たばこ葉不使用フレーバー1点、スチームストーン12点である。このうち9点は、製品名または説明に「ミント」「アイス」「フリーズ」があった。各試料3gをメタノールで抽出し、2回分の平均濃度を求めた。分析標準品などの条件から、定量対象は13種類のメンソール類似成分とニコチンになった。
天然のミント油は複数物質の混合物なので分析候補から外され、標準品を入手できない物質も除外された。さらに、立体構造だけが違う異性体はこの方法では区別していない。つまり、登録情報で見た22種類すべてを実測したわけではなく、選んだ市販品から対象物質を同定・定量する設計だった。
表示上のミントは39%、実測では18点中15点
香りを分類できた登録製品257点のうち、製品名や説明でメンソールまたはミントが主な香りだったのは13点、副次的な香りだったのは88点だった。合わせると39%にメンソール/ミントの記載があった。残る25点は情報が少なく分類できなかった。登録成分の中央値では、DL-メンソールが13.5mg/gと最も高く、メンソールを含む油類が1.5〜4.5mg/g、L-カルボンが2.33mg/gと続いた。
実測した18点では、対象にした13種類のうち7種類が少なくとも1製品から確認された。メンソールは14点に含まれ、濃度は0.22〜7.01mg/gだった。メンソールを含め、調べた類似成分のいずれかが検出された製品は15点に達した。たばこ葉使用、たばこ葉不使用、スチームストーンのどれにもメンソールが見つかり、製品区分だけでは存在を切り分けられなかった。
「ミント」「アイス」「フリーズ」の表示がある群のメンソール濃度中央値は0.69mg/g、表示がない群は0.38mg/gだった。表示のある群のほうが高い一方、表示のない製品にもメンソールは存在した。メンソール以外の類似成分の中央値は、それぞれ0.05mg/gと定量限界未満の0.07mg/g未満で、大きな違いは観察されなかった。したがって、名前は濃度の手がかりにはなっても、成分がないことの証明にはならない。
ニコチン表示と実測が食い違った例
たばこ葉使用フレーバー5点のニコチン濃度は0.91〜1.54mg/gだった。一方、販売サイトと包装シールでニコチン添加とされていたスチームストーン2点からは、この分析法でニコチンが検出されなかった。研究チームは、通常のたばこ葉使用フレーバーより1000分の1を超えて低い濃度だったとは考えにくく、販売者が添加しなかった可能性を挙げた。ただし、特定注文だけのミスか、繰り返されているのかは分からず、オランダ市場にニコチン添加スチームストーンが実際に流通しているかも不明なままだ。
成分の由来と作用をどう考えたか
メンソールがある製品では、カルボンやメントンなどが少量同時に見つかることがあった。研究チームは、その一因として天然ミント油の使用を考えている。ミント油にはメンソールだけでなく複数の類似成分がさまざまな割合で含まれる。ただし測定された成分比は、既知のミント油の組成だけでは説明できない試料もあり、純粋なメンソールや別の抽出物が加えられた可能性もある。これは成分比からの推測であり、添加工程を直接確認した結果ではない。
メンソール、メントン、カルボン、イソプレゴールはTRPM8を活性化することが知られている。一方、酢酸メンチル、プレゴン、ピペリトンの冷却作用については知見が限られる。プレゴンには発がん性が知られ、関連する天然代謝物にも毒性の可能性が指摘されているが、後者には追加研究が必要だ。研究チームは、コンピューター解析や細胞実験に加え、利用者が香りや冷たさをどう感じるかを調べる感覚試験・質問調査も必要だとしている。
結論と、この研究から言えないこと
研究チームの結論は、メンソールを連想させる名前の有無にかかわらず、多くの調査製品にメンソールまたは類似成分があったため、規制当局は表示のある製品だけに検査を限定すべきではない、というものだ。清涼感を示す名称の禁止だけでは、表示されない冷却成分を見逃す可能性がある。
ただし、実測は18点に限られ、たばこ葉不使用フレーバーは1点だけだった。この製品区分全体について明確な結論は出せない。EU-CEGもメーカーや輸入者の手入力で、不完全、古い、誤った情報を含む可能性があり、たばこ葉不使用製品は登録されないことが多い。登録された濃度や製品構成が、現在販売中の商品と一致する保証もない。
また、GC-MSでは一部の異性体を分離できず、同じ化学式でも香りの異なる物質を区別できない場合がある。研究は成分そのものを測定したが、加熱後の煙にどれだけ移るか、利用者が実際にどれだけ吸入するか、健康影響がどの程度かを直接測ったものではない。示されたのは市場全体の確定値ではなく、名称に頼らず成分を調べる必要性を支える限定的な証拠である。
S2はこう読む
- 分類できた登録製品の39%に、メンソール/ミントの香りが記載されていた。
- 市販18点中15点から、調べたメンソール類似成分のいずれかが検出された。
- ミント等の表示がない群にもメンソールがあり、名称だけでは成分の有無を判定できない。
正直な注意書き
- 実測は18点で、たばこ葉不使用フレーバーは1点に限られる。
- 成分含有を調べた研究であり、加熱後の吸入量や健康影響を直接測定していない。