シーシャで救急外来へ運ばれた人に何が起きたか
米国の9年分を推計。やけどと、めまい・失神が上位。3分の2は18〜24歳

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シーシャを吸っていて気分が悪くなる。火のついた炭でやけどをする。ある程度想像はつくが、米国全体でそれが実際にどれだけ救急外来までたどり着いているのかは、数字になっていなかった。
米国食品医薬品局(FDA)たばこ製品センターの研究者が、消費者製品に関わるけがを集める全国調査の2011〜2019年分から、シーシャが関わる38件を拾い出し、この9年間に米国全体で何件の救急外来受診があったかを推計した。
研究概要
- 調べたこと
- シーシャに関連する急性のけがで、米国の救急外来を受診した件数と、その中身
- データ
- 全国を代表するように選ばれた約100病院の救急外来のけが調査(NEISS)、2011〜2019年分
- 対象
- 記述のキーワード検索で見つけた53件のうち、飲酒・薬物の併用などを除いた38件
- 主な結果
- 全国推計1371件(95%信頼区間505〜2238)。やけど41.5%、失神・転倒36.5%、めまい18.3%
- 限界
- 推計1200未満は不安定とされる。専用の製品コードがなく、記述の検索に頼った
起こると分かっていたのに、数がなかった
シーシャは、10代と若い成人を中心に、健康への影響が心配されている。2019年には米国の高校生の3.4%にあたる50万人、中学生の1.6%にあたる18万人が、過去30日にシーシャを吸ったと答えた。2013〜2014年の調査では、18〜24歳の10.7%が過去30日に吸っていた。
急性の影響としては血圧や心拍数の上昇、一酸化炭素(CO)中毒に一致する症状が、長期の影響としては肺機能の低下や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、喘息が報告されてきた。典型的な45分のセッションでは、グリセロールが熱で分解してできるアクロレインやベンゼンなどを大量に吸い込み、COの量は紙巻きたばこ1本の最大12倍、煙の量は100本以上に相当するという報告もある。
それでも、けがや中毒が実際に何件起きているかという全国規模の数字はなかった。近いものに、中毒情報センターへの相談を集めた全米中毒データベース(NPDS)の研究があり、2005〜2017年にシーシャ関連の中毒の電話が276件と報告されている。ただしこれは、電話をかけた人の分しか入らない。そこで著者らは別の仕組みに当たった。
約100病院の記録を、13通りの呼び名で探す
使ったのは、米国消費者製品安全委員会(CPSC)が運営する全国電子傷害監視システム(NEISS)である。救急外来を持つ全米約5000病院から全国を代表するように選ばれた約100病院が参加し、消費者製品が関わったけがの受診を集めている。症例ごとに年齢や性別、起きた場所、診断、その後の扱い、症状を含む経過の記述が、診療録から院内の担当者の手で入力される。NEISSとは別の全国調査がシーシャの利用を尋ね始めた時期に合わせ、2011〜2019年分を対象にした。
著者らは、この経過の記述を13語のキーワードで検索した。shisha、narghile、goza、hubbleのように、地域や綴りの違う呼び名を並べたものである。引っかかったのは53件。全著者が独立に53件を読んで食い違いをすり合わせ、飲酒や違法・不明の薬物を一緒に使っていた例と、シーシャが直接の原因だと読み取れない例の計15件を外した。残った38件が分析の対象になった。
2人の著者がさらに38件の記述を読み、やけど、CO中毒、失神、めまい、息切れといった症状を拾って、主症状と副次症状に分けた。めまいがして転んだ例なら、主症状がめまいで、副次症状が転倒になる。1年ずつでは件数が少なすぎるため、9年を3年ごとの3期に区切り、標本の重みを加味して全国の件数に換算した。
9年で推計1371件、3分の2が18〜24歳
38件は、全国では1371件(95%信頼区間505〜2238)に当たると推計された。年齢別では18〜24歳が66.8%と突出し、推計916件を占める。次が25〜34歳の11.3%、12〜17歳の10.3%で、35歳以上が6.3%、0〜5歳が5.3%、6〜11歳は1件もなかった。
3年ごとに区切ると、2011〜2013年が99件、2014〜2016年が518件、2017〜2019年が755件で、9年を通して増えていた。性別では女性が59.8%、男性が40.2%。人種は白人が36.6%、黒人が27.2%、その他が5.8%で、記載のないものが30.4%あった。
やけど41.5%、めまいと失神で54.8%
主症状で見ると、単独で最も多いのはやけどで41.5%(17件)。次が失神や転倒の36.5%、めまい・ふらつきの18.3%で、裂傷や眼のけが、息切れなどのその他が3.6%。めまい・ふらつきと失神・転倒を一つにまとめると54.8%になり、論文の要旨ではこちらを最も多い傷害として先に挙げ、やけどの41.5%をその次に置いている。
やけど17件のうち、記述から程度が分かるのは浅いやけどが2件、皮膚の一部まで達する2度のやけどが2件で、残る13件は程度が書かれていなかった。診断名では熱傷が41.5%、内臓の損傷・脳しんとう・酸素欠乏が34.3%、打撲や裂傷などが12.8%。起きた場所は46.1%が記録なし、38.3%が店舗などの公共の場所やスポーツ・レクリエーションの場、15.6%が自宅。84.1%は治療を受けて帰宅し、15.9%は入院・転院または経過観察になった。
電話記録の4倍、半数超はCO中毒に重なる症状
1371件という推計は、同じころのNPDSで数えられた件数のおよそ4倍だった。著者らは、すぐ手当てが必要な例の一部は中毒情報センターに電話せず救急外来へ向かうため、電話の記録に残らなかったのだろうと見ている。
著者らが最も重いものの一つに挙げるのが、急性のCO中毒である。この研究の症例の半数超が、CO中毒に一致する症状を訴えていた。ただしこれも実際より少ない可能性がある。ふらつきやめまいをCO中毒と結びつけない人は救急外来に来ないし、そもそもその感覚をシーシャの意図した効き目と受け取っている場合がある。大学生の先行研究では、吸う理由としてリラックスがよく挙げられ、ふらつきやめまい、平衡感覚の喪失、いわゆる「バズ」がリラックスした感じと結びつけられていた。
やけどの多くは、火のついた炭に直接触れて起きていた
やけどのほうは、これまでの文献でほとんど報告されてこなかったと著者らは書く。この研究では約40%を占め、その多くは火のついた炭に直接触れたことによるものだった。浅いやけどは自分で手当てして終わることが多く、これも実際より少なく出ている可能性がある。先行の症例報告には、シーシャを出す飲食店で3歳の子どもが火のついた炭が載ったシーシャ台を倒し、手と顔にやけどを負った例がある。今回の記述にも、ホースを引っ張ってシーシャ台を倒す、火のついた炭ごと誤って倒すという同じ形で、浅いやけどや2度のやけどを負った例がいくつかあった。
若者に多く、運ばれたのは女性が多い
18〜24歳が3分の2を占めたことは、この年代で現在の利用率が高いという先行研究と合う。9年で推計が増えたことについて著者らは、利用率自体は期間中に上下しているとしたうえで、規制のための研究や健康教育でシーシャのけがが知られるようになったこと、2016年にFDAがシーシャフレーバーを含むすべてのたばこ製品を規制の対象にしたことを挙げ、認識が高まった面があるかもしれないとしている。
もう一つ、救急外来にかかったのは女性のほうが多かった(59.8%)。しかし利用率は男性のほうが高い。著者らは、女性のほうが医療にかかりやすいという先行研究を挙げている。
1371という数字の読み方
限界は二つある。一つは、CPSCが推計1200未満を不安定で信頼性に欠けるとみなしている点。全期間を合わせた1371件はこの線を超えるが、年齢や症状で分けた数字は不安定でありうる。もう一つは、NEISSにシーシャ用の製品コードがなく、記述のキーワード検索に頼ったこと。拾い漏れがあれば全体は少なく出る。
それでも、シーシャによる急性のけがで救急外来にかかった件数と中身を全国規模で示したのは、この研究が初めてである。著者らは、利用者の多くはこうしたけがが起こりうると知らないかもしれないとして、政策づくりと啓発、そしてNPDSなど他の監視の仕組みを補う材料になると結んでいる。
原典の要点
- 救急外来までたどり着いたけがの中身は、やけどと、めまい・失神のふたつでほぼ占められていた
- 3分の2が18〜24歳。3年ごとの推計は99件、518件、755件と、9年のあいだに増えていた
- やけどの多くは火のついた炭への直接接触で、ホースを引いてシーシャ台を倒した例が記述にあった
読むうえでの注意
- 38件からの推計で、95%信頼区間は505〜2238と幅が広い。年齢や症状で分けた数字はさらに不安定
- NEISSにシーシャ用の製品コードはなく、記述のキーワード検索で拾えた分だけ。見落としがあれば、その分は数に入らない