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着火剤入りの炭は天然炭に比べ一酸化炭素の発生が多い — 記事キービジュアル
炭・道具2026.07.198分で読めます

着火剤入りの炭は天然炭に比べ一酸化炭素の発生が多い

着火剤入りの炭と天然炭を、同じシーシャ台で90分間比べる

きっかけは、シーシャを吸ったあと重い一酸化炭素中毒で救急受診した55歳男性だった。男性は胸の圧迫感、息苦しさ、強い脱力感、気を失いそうな感覚を訴え、使用から約3時間後にも、血液中のヘモグロビンの29%に一酸化炭素が結びついていた。計算や短期記憶、歩行などにも異常が見つかったが、高い気圧のもとで酸素を吸う治療を2回受け、神経症状は消えた。長年シーシャを吸っていたこの男性が、その日に初めて使ったと話したのが着火剤入りの炭=クイックライトチャコールだった。

この症例だけで炭が原因だとは決められない。シーシャは紙巻きたばこより安全だと思われることがあるが、利用者はニコチンや一酸化炭素などへ高い濃度でさらされうる、と著者らは背景を説明している。しかも熱源の炭だけでも一酸化炭素を出す。そこで著者らは、よく使われる天然炭と、火がつきやすいクイックライトチャコールでは、一酸化炭素の発生量が違うのかを装置で確かめた。著者らの予想は「クイックライトチャコールのほうが一酸化炭素の発生量が多い」というものだった。一般的な1回の使用時間を想定した90分間、同じ条件で二つの炭を追う。

研究の概要

問い
クイックライトチャコールは天然炭より一酸化炭素を多く出すか
比較
市販のクイックライトチャコールと天然炭を、炭だけで90分測定
反復
クイックライトチャコール4回、天然炭3回
測定
3分ごとの一酸化炭素濃度と炭の中心温度

フレーバーを入れず、炭の違いだけを見る

実験では、中型のシーシャ台、煙を通すフィルター、一定量を引く注射器、空気と混ぜる袋、一酸化炭素濃度計を気密性のある管でつなぎ、排気設備の中に置いた。ボウルの上には18個の穴を開けたアルミホイルを張り、その上で市販の炭を1個ずつ燃やす。炭の重さは9〜10gだ。実際の使用ならホイルの下にフレーバーを置くが、今回は炭そのものが出す一酸化炭素を比べるため、フレーバーは入れなかった。

人が吸う動きに近づけるため、3分おきに5秒かけ、注射器で煙600mLを引き、空気2.4Lで薄めて袋の中で均一にした。この袋の一酸化炭素濃度を90分にわたり3分ごとに測定し、同時に赤外線温度計で炭の中心温度も測った。クイックライトチャコールは4回、天然炭は3回繰り返し、時間による変化を含めて平均値を比べている。同じ台、同じ炭の重量範囲(9〜10g)、同じ吸引間隔をそろえることで、比較の中心を炭の種類に絞った設計だ。測定器を繰り返し使ったときの値のばらつきは、濃度計で12%、温度計で6%と報告されている。

クイックライトチャコールは遅れて大きな山をつくった

点火から3分で、袋の一酸化炭素濃度はどちらの炭でも急に上がった。原典のResults本文では、クイックライトチャコールは平均3469 ppm、天然炭は2418 ppmだ。ppmは、気体の体積比率で100万分の1を表す濃度単位だ。この本文値を百分率に換算すると、袋内の気体に占める一酸化炭素の体積比率は、クイックライトチャコールでは平均0.3469%、天然炭では平均0.2418%に当たる。ただし、ここでの数値は実験装置で集めて空気と混ぜた気体の測定値であり、そのまま人が吸い込む濃度を測ったものではない。

天然炭は点火6分後に2627 ppmで最大となり、その後は下がった。対してクイックライトチャコールは一酸化炭素濃度が高い状態が20〜30分続き、原典のResults本文では27分後に6424 ppmで最大となってから低下した。ただし、Figure 2Aのプロットは3469 ppmと6424 ppmより高く見え、Results本文の値と一致しない。90分全体の平均はクイックライトチャコール3728 ppm、天然炭1730 ppmで、クイックライトチャコールは2倍を超えた。ばらつきと時間経過を考慮した統計上も炭の種類による差があり、点火後63分まではクイックライトチャコールのほうが一酸化炭素濃度の高い状態が続いた。つまり、二種類の炭の違いは90分間の平均濃度だけでなく、山の高さと現れる時刻にも表れた。

より熱い天然炭のほうが、一酸化炭素は少ない

温度の結果は一酸化炭素とは逆方向だった。点火直後はクイックライトチャコール443℃、天然炭435℃で、どちらもそこから低下する。ところが6分後から90分後までは天然炭のほうが高温で、全体の平均も天然炭292℃、クイックライトチャコール247℃だった。火力の高い側が一酸化炭素も多い、という単純な並びではなかったのだ。

この逆方向の結果を、著者らは後の考察で燃え方の違いを探る手がかりにする。

測定値を、医療の問題へどうつなげたか

一酸化炭素は、血液で酸素を運ぶヘモグロビンなどに強く結びつき、濃度が上がると細胞の働きを損なう。表注では、今回の症例を含む27例の平均年齢は23.7歳、一酸化炭素と結びついたヘモグロビンの割合は平均21.4%、高い気圧のもとで酸素を吸う治療を受けたのは4例とされている。一方、表本体は今回の症例を含めて28行あり、表注の27例と一致しない。著者らは、報告例が増えた理由として不完全燃焼、煙が冷たく吸いやすいため一口が大きくなること、吸い方の違いなどが考えられてきた一方、炭の種類は候補にされてこなかったと指摘する。

今回、クイックライトチャコールの一酸化炭素平均濃度は天然炭の2倍を超え、また、高発生状態が20〜30分続いた。著者らがフレーバーを入れなかったのは、二種類の炭の燃焼だけを切り分けるためだ。そのため、この実験はシーシャを吸う人の体内に入った量や、症状が起きる確率を直接調べたものではない。一方で著者らは、実際には炭の下でフレーバーも加熱されるため、一酸化炭素濃度はこの実験よりかなり高くなる可能性があると考えている。さらに、クイックライトチャコールで得た高濃度が持続すれば、致死的とみなされる曝露になりうるとも論じた。著者らの知る限り、シーシャ関連の死亡例はなかった。これは装置の測定値からの危険性の評価であり、参加者を曝露させて確かめた結果ではない。

では、なぜクイックライトチャコールのほうが一酸化炭素の発生が多かったのだろうか。著者らは、高い温度では燃焼がより完全に進み、一酸化炭素が少なくなった可能性を挙げている。ただし、温度だけが原因とは考えにくいとも述べた。ピークを過ぎたあとの減り方が二つの炭で似ていたからだ。著者らは、温度よりも炭の材料の違いを有力な説明とみているが、これはこの研究で検証されたものではない。論文によれば、一般にクイックライトチャコールは粉状の石炭、金属酸化物、有機物などを固めて着火しやすくしたもの、天然炭は木やココナッツ由来の塊を酸素の少ない状態で焼いたものだ。しかし、実験に使った二製品の詳しい組成は開示されておらず、この研究から差を生んだ成分までは特定できない。

見えた差は大きい。けれど「すべてのクイックライトチャコール」ではない

この装置実験では、クイックライトチャコールは天然炭より90分平均の一酸化炭素濃度が高く、遅い時刻まで大きな山が続いた。著者らの知る限り、一般的な二種類の市販炭について、点火後の一酸化炭素濃度の違いを調べた初の研究だ。著者らは、近年報告されていた重いシーシャ関連の一酸化炭素中毒に、クイックライトチャコールの使用が関与している可能性があると結論づけ、医療者にも注意を促している。

ただし、この研究で使ったクイックライトチャコールは1銘柄だけで、すべてのクイックライトチャコールの一酸化炭素発生量を代表するとは限らない。著者らは、ほかの種類の炭なら今回とは異なる量の一酸化炭素を出す可能性も認めている。それでも、この装置実験では、クイックライトチャコールが天然炭より90分を通じて統計上も多くの一酸化炭素を発生させた。

この記事の要点

  1. 装置内の90分平均は、クイックライトチャコール3728 ppm、天然炭1730 ppmだった。
  2. 天然炭は6分、クイックライトチャコールは27分で最大となり、クイックライトチャコールは一酸化炭素濃度が高い状態が長く続いた。
  3. 天然炭のほうが高温で、著者らは温度が差の一因になりうる一方、一酸化炭素の低下率が両炭で似ていたため、温度だけが理由とは考えにくいとした。

読むうえでの注意

  • 炭だけを燃やした装置実験であり、人が吸い込む濃度や中毒の発生率を直接測っていない。
  • クイックライトチャコールは1銘柄だけなので、すべてのクイックライトチャコールへ結果を広げられない。

公開 2026.07.19 更新 2026.09.02
記事は論文の要約であり医学的な助言ではありません